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『二兎』3号つづき2

  川の背中    岡島弘子

かなしばりにあって
車がみんなとまる あの
横断歩道のような
川の背中をわたると
せきとめられた流れのうずに いっしゅん
甲羅が光って消えた

バーコードのような
川の背中
読み取り機をピッとあてると
エビ カニ さかな
いろいろな品物の名と値段にまざって
皿も一枚あらわれる

ピアノの鍵盤のような
川の背中
弾くと
しっと あせり しゅうちゃく
うらみ おそれ ぜつぼう
陶酔やあこがれ
さまざまな感情のすきまから
河童の高笑い
ひびきわたる

東京のビル街
どこでも川の背中にかえて すばやく
河童が影を落とす




  遠野の森               絹川早苗

その谷戸に入るとき かならず
案内人は 帽子を取り 頭を下げ
「入らせてもらいます」と 声に出して言う

入っていったときと 出たときの
人数の合わないことが たまにある
歩いているとき ふと後ろを振り返ってみると
だあれもいなくなってしまったことも・・・

町に近く 人家もせまる この小さな森も 
迷いこめば 遠野に通じている

フクロウの声に誘われ 
近くの雑木林に足を踏み入れた
陽が落ちると 月のない森は たちまち
薄墨色にとけだし 風景は輪郭をうしなっていく
ここまでは街灯が至ってないことを 
はじめてのように気づく
なじみの道なのに 方向さえ見失ってしまう

時を越えても変わらない鳥の声が
“ごろすけほうこう” と 
声をかけてくるのも苛立たしく 
さまよったすえ やっと
はずれに立つ一本の街灯を見つけ
アスファルト道路に 生還した
 
遠野の深い森に入りこんだ恋人どうし 
たがいを見失い 探しまわったあげく
果てには 飛びたっていく 
鳥になって…




    トーノ、言の葉     広瀬弓

トーノより粗品をお届けします
きのう遠野の旅人から
便りがあった
見えない風の匂い

古人のように
丘から湧き出す音を思う
一面のハルジオンの野原
白い花の上はゆらゆらゆらぎ
空と気の狭間はふるふるふるえ
と の 
 な い 
言の葉が浮かぶ

○遠野郷のトーはもとアイヌ語の湖という語
より出でたるなるべし、ナイもアイヌ語なり。
○上郷村大字来内、ライナイもアイヌ語にてライ
は死のことナイは沢なり水の静かなるよりの名か。

百年前の便りに
柳田国男はそう記した
木洩れ日のまだらの中の
光の井戸を行くごとく

ハルジオンの扉が閉じかけます
春の内臓から
音がはみ出した
現れる息の匂い

トーノ、言の葉
ざわめく風にのって
静かな水がやって来る
時の湖底を旅人の影が渡っていった










  
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